Quartz Composerを利用した360°全周ムービー

MacOSXに標準で付いてくるQuartz Composerというソフトは、難しいプログラミングの約束や構文を覚える事無く「パッチ」という機能別のオブジェクトを線で繋げるだけで絵や動画に面白い効果をつけたりアニメーションさせたりできる優れもののソフトです。もともと2Dだけでなく3Dの動きも付けられ、球やティーポッドなど用意された3Dオブジェクトが使えるようになっていましたが、10.6Leopardでは自作の3Dオブジェクトも扱う事が出来るようになっています。
Quartz Composerは非常に強力で、3Dオブジェクトのテクスチャに動画を貼付けてリアルタイムに再生するという事がもう、全くあっさりと、出来てしまいます。
そこで思いついたのは球の内側にパノラマ映像を貼付けて内部から観る事で360°の全周スクリーンを実現してしまおうというアイディアです。そこで作ってみたのが以下のもの。



Download : QC360_Screen.dmg_HD.zip
<追記:2014/1/14:HD版として再公開しました。>

zipを解凍するとディスクイメージが出てくるのでマウントしてもらうとqtzファイルと参照ムービーが入っています。

参照はボリュームからのフルパスになっているのでファイルを移動しないでください(相対パスがうまくいかなかった)。
qtzファイルはQuartz Composerのプロジェクトですが、インストールしなくてもそのままQuickTime7で再生できてしまいます(QuickTimeXは不可)。
再生ボタンで開始。マウスのクリック&ドラッグで向きが変わります。
一応PowerPCのOSX10.5でも確認は出来ましたが若干挙動が怪しかったりしたので注意です。

画質が非常に粗いのは性能の限界でなくて、単にレンダリング時間をケチったせいです(汗)。参照ムービーを大きくすればレンダリング時間はかかりますがその分高画質になります。OSXのQuartz性能ならだいぶ大きくしてもそれほど重くはならない気はします。

核になっているパノラマムービーはこんな感じ。


解説や作り方は以下より



a0015997_12374529.jpg

パノラマムービーは今回LightWave3D v9.6を使いました。個人的に慣れてるので手早く作りたかったためです。オープンソース3DソフトのBlenderにもパノラマ360°の画像を作る方法があるので、がんぱれば追加投資無しで作ることができます。modo401でも出来るかもしれないです。
極端な話こういう映像が撮れれば実写でもOKなわけです。無茶すれば手描きアニメとか。
a0015997_12365481.jpg

LWではカメラにAdvanced Cameraを使用して Fovに円柱(Cylinder)を指定。水平(Horizontal):360° 垂直(Vertical):240°
の設定にする。あとはお好きなようにオブジェクトを置いてアニメーションを付けてレンダリングするだけ。カメラ以外は普通の3DCG制作と特に変わりはないです。違うのは、常に上下左右いろんなところが見えているようにつくること。

Quartz Composerをインストールしていない方はOSXのインストールディスクからオプション選択でインストールしてください。
自作のパノラマムービーが出来たら上でダウンロードしたqtzプロジェクトをQuartz Composerで開いて、3D Transformationというパッチをさがします。
a0015997_1239142.jpg

そのパッチをダブルクリックすると球のオブジェクトを描画する処理が出てきます。ムービーをドラッグ&ドロップすると新しいムービーパッチが出来るので、Imageという部分の○をドラッグしてFlip-FlopパッチのInput imageのところに線を繋げます。するとほぼ同時にViewerで再生が始まります。
a0015997_12401081.jpg

以上おわり。

「ね?簡単でしょう?」

まぁ手順自体は簡単ですが一番難しいのがやはりコアのムービーをいかに作るかでしょう。なんといってもプリレンダーなので時間さえかければ限界はほぼ無いといっていいからです。でもその話はまた後ほど。細かい話をもう少し。

Quartz Composerでの処理を解説、したいところなのですが実はクリック&ドラッグで視点を変える部分の処理は、自分でも相当頭をひねったのですがなかなか上手くいかず、ヒントを求めていろいろなサイトを見たところ、Dasaq's Blogというところでドラッグ&ドロップの処理を実験している記事を発見しました。そこで使われてる処理が、まさに自分の探してた処理と同様の結果を出していたので、非常に勝手ながら、Dasaq's Blogさんのパッチのアルゴリズムを使わせていただきました。
で、そうやってマウスの座標から回転角を算出して3D Transformationパッチに渡しています。これはマクロパッチと言われるもので、内部に処理を持つことができます。この場合は3D座標上で移動回転した情報を下層に渡して描画させるという感じかな。下層では先ほど述べたとおり球オブジェクトの描画になりますが、球のスケールを大きくしてカメラを包み込む大きさにし、正面のポリゴンを描画しない設定(front face culling)にしています。裏のポリゴンだけを表示するためテクスチャが左右反転するのであらかじめFlipFlopパッチで反転しておくと、貼付けたときに正常に見えます。また、ディフォルトではテクスチャの継ぎ目が正面に来るのであらかじめ球をY軸で180°回転させています。インスペクタのSetingタブで球のポリゴン分割数を若干細かくしています。
a0015997_12472599.jpg

具体的な解説点はもうそのぐらいしかありません。ある意味非常に単純な構造になっています。

今回はチャッチャと作ろうとしたために無機的な背景で、カメラ以外動くものが無かったりしてました。飛行機ぐらい飛ばしてもよかったかもしれません。
作っていてわかった事ですが、カメラの移動が速すぎると周囲を見回す余裕が無くなってしまうので基本的にゆったりとした動きで作る必要が出てきました。最初作ったときの5倍ぐらい遅く作っています。そのために尺が長くなる傾向があり、ちゃんとしたサイズでレンダリングしようとすると丸一日計算させても終わらなそうな感じだったのですが、公開を急いだために今回はこんなショボイ解像度になってしまいました。オクルージョンとかスカイトレーサーが重かったかなぁ。16コアだと速いのかなぁと思ったり。アニメーションに話を戻すと、やはり緩急を使い分けるのが一番いいのかもしれません。
あと、Quartz Composerでの音声の扱いはまだちょっと不明。ムービーパッチにもAudio outが無いみたいだし、ガレージバンドの効果音を放り込んでみたらはじかれてしまった。
ただ、パッチの中に3D Sound Playerなるものがあるので研究すると面白いかも。

しかし、この360°ムービーというのは正直ものすごく奥の深い代物ではないでしょうか。ブラウザで動くリアルタイム3Dを作るソフトやFPSゲームのMODツールではレベルデザインというかたちでカメラ周囲の環境をつくったりする事はあると思いますが、ゲーム系に縁のなかった自分のようなものでも簡単に作れてしまうのは非常にインパクトがありました。
あとはレンダラーと、作る手間隙と、レンダリング時間によっては何でもアリな世界なワケで、実際できるかどうかは別として、それこそ上野科学博物館のシアター360みたいなのもCall of Duty4のクルマに乗せられるシーンみたいなのも、ホーンテッドマンションやスプラッターマウンテン(違w)みたいなものも、作り手次第なんじゃないのと妄想が広がってしまったりします。まぁそれは無理にしても、自分には全く別の次元が開けたように感じます。
ここでQuartz Composerとか今回の作品とか、個人制作とか商業制作とかを離れて広ぉ~~~~く一般に360°ムービーの話をすると、先ほどゲームの話が出ましたが、ああいったものは「ゲームを前提として」作られる分、独特の作法や文法、制限がある気がします。「ムービーとして」の360°映像にはまた、それらとは微妙に違う文法や可能性があるような気がするのです。見ている人の視線を誘導しておいて、思わぬところから驚くようなものを出現させたり、観客は1回の再生では全てを観る事が不可能なのでいろんなアングルを見るために何度も何度も繰り返し再生するような、あるいは思わずそうしたくなるような作り方を追求したり。あれはいつの間に、どこから出てきたんだろうと思わせるような物体なりキャラクターなりを配置したり。たとえば視線を誘導させておいて突然後ろから声が聞こえるとか…。そんな妄想がひろがりんぐでした。

実はこのアイディアを思いつくきっかけになったのはネット上で有名な「<ダメ絵>撲滅キャンペーン」のなかで、安易な広角画面はヘタの証拠という記述の部分があって、広角好きな自分は図星だったというか、ダメ出しされた気がして、じゃぁもしも、そもそもフレームの概念が存在しない360°映像とかだったらどうなるんだろうと、まず思いつきました。そんな事をblogに書こうといろいろ調べ始めたら、どうも手元にあるもので再現できるみたいということになって、もうそんな提案とか記事とかどうでもいいからとにかくやってみようということであれこれやった結果こんなことになりました。まぁ、こういうのでドラマってのは、無いかもしれないですね。
[PR]
by yoshihide-ohkubo | 2009-11-03 12:51 | Mac


<< 岩石とかの形について調べてみた 手ブレでどうしようもない映像を... >>