古き良きアニメーションに飢えている人へ〜「ニムの秘密」〜

 最近流行りの3DCGアニメもいいけどちょっとノリが軽すぎるなぁとか、DVDで出てるディズニークラシックも今ひとつ物足りないし、なんかもうちょっと気合いの入った”むかし風の”アニメーションが観たい、という人がいたら、この”ニムの秘密”をお薦めします。
 ディズニーチャンネル等で放映されたりはしていたものの、ごく一部しか(例えばこのブログとか^^;)知られていない作品であったのですが、つい先日DVD化され、キャンペーンの1部として店頭に並ぶようになりました。
 3DCGの流行りでセルアニメが無くなりつつある昨今ですが、この作品もまたディズニー等の古典的なアニメーションが衰退していった80年代初頭に作られた野心的な作品でした。この作品を作ったドン・ブルース監督らがその後”アメリカ物語”などをヒットさせ、それをきっかけにセルアニメの見直しが始まり、後のリトルマーメイドから始まるディズニーアニメ復活にも影響を与えました。

 ストーリーの言い方は色々ありますが、ここは

「病気の子ネズミを救おうとする母ネズミの大冒険」

としておきましょう。単純にそれを期待していただければまず間違いなく楽しめます。
 劇中では端々で、このちょっと頼りない母ネズミ=ブリズビー夫人が不安と恐怖におののきながらも危険に立ち向かって行く様子が描かれ、途中にほとんどホラー映画の様な展開を挟みつつ、最後の最後までハラハラさせられます。こういった「怖さ」を取り入れているのも、子供向けとされる米国アニメーションでは非常に稀なケースといえます。
 そのようにシリアスな本筋がある一方でドジなカラスや世話好きのおばさんネズミ、やんちゃな子ネズミ達などの笑いや心温まるシーンもふんだんに盛り込まれています。
 この作品ではそういったキャラクター達が本当に魅力的に描かれていて、その魅力が映画の原動力になっているといっても過言ではないでしょう。

 古典アニメの回帰を目指した作品だけにビジュアルのクォリティは今観ても群を抜いています。指輪物語やダーク・クリスタルを彷彿とさせる背景美術や、火花や不思議な光などのエフェクトもさることながら、アニメーション技術に至ってはキャラクターの毛などの手触りが伝わってきそうな程の表現力を持っています(不幸な事に唯一パッケージイラストがヒドい出来ではあるのですが、店頭で裏返してもらえば劇中のスチルを見ることができます。まっったく違います)。

 あと一つ、もしこれから観ようとする方がいたらお願いしたいのは、是非吹き替えで観ていただきたいという事です。原音ではささやくような声になってる部分があるのに対して、吹き替えでは劇中の重厚な雰囲気にあった抑揚のついたしゃべり方をしてるため、キャラクターの魅力がさらに増している様に思われます。また字幕がないほうが画面の隅々まで堪能できるのでお勧めです。

…っと今回はいつもと違って一見さん向きに書いてみました。ブログの文脈からするとヘンかもですが。
そして以下ネタバレモードへ




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今回こんな書き方にしたのは、自分がこの作品を見た当時、内容についての情報一切なしの状態で観たからでした。もしこれを機会に観てくれるとしたら、詳しい内容を書かない方が楽しめるんではないかと思った次第です。まぁ検索でポッと来た一見さんがそこまで興味を持つかは怪しい所ですが…。

 自分の場合はそれまでに観ていたアメリカ物語やリトルフットがかなり気に入っていて、その監督の作品がレンタルでなく店で売っていたんで期待半分不安半分で買ってみたのがきっかけでした。パッケージのストーリーを見た記憶はなくて、てっきり中世のおとぎ話的な世界の話だと思ってました。事実、本編の導入部も、内容の大半もそんな感じなんですが…。

 驚いたのは舞台が現代だったことですね。メインスタッフのクレジットが終わる頃に錆びれた農耕機械がアップになったときは「なんだこれは!」と思いました。
 さらに話の中心核まで行くと実は思いっきりSFなんですね。
 それでいて全体の雰囲気はこれ以上ないほどおとぎ話しているという。
 当時はディズニー系のアニメに興味を持ち始めて一年ぐらいの頃で、ディズニー長編の大体はレンタルで一通りみていたのですが、どれも自分にとっては話が弱いなぁと思ってました。
そういう中でこの作品の迫力に出くわして、正直ショックでした。

 迫力でいえば、この作品のスリルとサスペンスもかなりハイレベルですね。ニムの秘密3大怖いキャラの、ドラゴン、大フクロウさま(実はやさしい)、ブルータスなんかが出てくるシーンは、未だに匹敵する迫力のアニメーションは観た事ないです。
猫のドラゴンは初登場シーンより声だけの”夕飯まだか~"のシーンの方が怖い。
大フクロウさまの大蜘蛛グッチャリの登場シーンはインパクトあり過ぎだし。
ブルータスに至っては、設定上は普通らしいけど”あの”シーンでは完全にイッちゃってて、ほとんどレザーフェイスかジェイソンかというぐらいの迫力でした。

 他にもジェナーやジャスティンのカッコ良さ、出血やケガの描写など特筆したいものは多々あるわけですが、そろそろ本題に入ると、この作品の最大の特徴は、原作から離れた大胆(過ぎ)な脚色にあるという事です。
 先の文でも触れたようにこの作品、というか原作の「フリスビーおばさんとニムの大ネズミ」は現代を舞台にした、遺伝子実験に使用されたネズミたちを巡る物語であり、ふつうこの原作をそのまま映画にするとしたらもっと現代風の、かなりドライな描写になるはずです。ネズミたちはあり得ないほどの知能を持っているとしても、原作では擬人化ネズミが書物を読んで、電気を操り、巨大な施設をつくる程度のものでしかないのですが、映画では文化レベルがほとんど中世で、魔法まがいの力を持つ者まで存在します。
 実際に映像を見れば薄々気がつくと思いますが、ドン・ブルース達はこの原作をとっかかりに、事もあろうにネズミ版ロード・オブ・ザ・リング(あるいはホビット)を作り上げようとしたのです。
 大ネズミのリーダー、ニコデムスは完全にガンダルフだし、恐ろしげな蜘蛛も出てくるし、小さき者が大きい人を救う構図やら、不思議な力を持つ宝もあれば、それに魅了されて奪おうとするヤツも出てくる。
映画の重要なアイテムとして、赤く光る不思議な石が冒頭から出てきます。「真の勇気を持つ者が手にすれば、石は力を持つ」とのことですが、主人公の夫ジョナサン・ブリズビーの形見という事ぐらいしか明かされず、説明をほとんどしないおかげでほとんど疑問に思わず最後まで観てしまい、感動されられてしまいます。
 でもよく考えてみれば研究所を裸一貫で脱出してきたネズミがいったいどこから拾ってきたんだろう、なんていう疑問もないではないですよね。スメアゴルみたいなヤツが居て、そいつからカッ払ってきたんでしょうかw。
 ラルフ・バクシという監督が指輪物語をアニメーション化していますが、製作された時期も近いし、何か触発される物があったのでしょうか。話によれば60年代か70年代のアメリカで指輪物語が大ブームになった時期があったそうですし、ジョージルーカスも影響を受けたそうなので、この年代の人特有の思いなんかもあるのかもしれません。
 そうした一見相反する要素を掛け合わせて、力技で見せきってしまう様なパワフルな映画でした。

 自分にとっては素晴らしい映画だったのですが、不満を感じる向きも当然あるわけで、ネットに限らず数少ない雑誌のレビュー等でもいくつか目にしました。その方達の不満も、多くは上に書いた脚色部分の欲張った部分からくるものの様です。
 映画全体で何を主張しているのか、という事を考えると、遺伝子操作と権力争いと小ネズミの引っ越しと…などとテーマを絞りきれてない部分はあるようで、映画を多く見る方にとっては、結局なんだったの?という感じを受ける事が多いようです。クライマックスで3匹も死者が出るにもかかわらず、まさに大山鳴動ネズミ一匹。
 しかしこの文最初のあらすじにある通り、”子ネズミを救う母ネズミの大冒険”というシンプルな筋に関していえばこの映画は最後まで一貫していました。自分が違和感を感じないで済んだのはそのおかげのようです。

冒頭の話に戻りますが、CGでもセルアニメでもいいんですが、最近あまりに軽ーいノリのアニメばかり作られてるような気がしてます。PIXERのスタイルとしては軽めの作風でテーマに導く様子がうかがえますが、それがウケるとばかりに他社はそれに輪をかけて軽いノリにしてしまってるので当分この傾向は続きそうなのですが、ニムの秘密ぐらいに気合いの入ったアニメーションをもう一度観てみたいモノです。

何回かに分けて書くとモチベーションあがらない恐れがあったので、この機会にひとまとめにしてしまいました。
書き足りない部分があるかも知れないですが、とりあえずこんなところで。
ここまでつきあってくださった方ありがとうございます。長文失礼しました。m(_ _)m
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by yoshihide-ohkubo | 2005-11-21 00:18 | カートゥーン


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